3月30日「生物季節観測の発展的な活用に向けた試行調査の開始について」というニュース。気象庁・環境省・国立環境研究所の三者が連携しながら「生物季節観測」を継続、新たな枠組みの構築に取り組んでいくという朗報です。
昨年の11月10日に気象庁から発表された「生物季節観測の見直し」のニュースを受けてのものとなります(関連記事:気象庁からの「生物季節観測の見直し」のニュースに思うこと / 2021.2.2)。
今回の発表の概要を見てみると「生態環境の変化や気候変動の生態系への影響把握、身近な生物の観察を通じた四季の変化や生物への関心を高める活動など、生物季節観測の発展的な活用に向けて、気象庁・環境省・国立環境研究所が連携した試行的な調査を開始する。」と記されています。
気象庁・環境省・国立環境研究所の三者は、今まで、それぞれの観測の目的に基づき、独自の手法で個別に「生物季節観測」を行ってきました。
- 気象庁:動物・植物の変化によって季節や気候のズレを知る
- 環境省:地球環境や生態系の状況を動物・植物の分布や生育範囲で推定する
- 国立環境研究所:個別の動物・植物の研究から生態系の変化を把握する
今後は、三者が観測の目的の垣根を超えて、共通の枠組みの中で連携をしながら「生物季節観測」を継続していくという形になります。この横断的な取り組みは、地球温暖化対策などを視野に入れた大規模な「生物季節観測」の枠組みとなり、動向が注目されるところです。
継続的な観測のための枠組みを構築していく上で、次の2つの観点と取り組み内容が掲げられています。
①生態環境の変化や気候変動が生態系に与える影響の調査などに有用な基礎資料である観点:「調査員調査」これまでの観測データとの継続性を保った調査
「市民参加型調査」につながる試行調査の進捗も踏まえながら、国立環境研究所が中心となって、約70年の観測データの継続性の観点を重視した試行調査を立ち上げていく。
②生物を通じて四季を感じる文化的な価値があるなどの観点:「市民参加型調査」広く一般の方まで参加いただく調査
関係する団体から一定の専門性を有する方々に協力していただく形で、3月31日より、環境省の生物多様性センターが運営する生物の情報を収集・提供するシステム「いきものログ」を用いて、初鳴き等の情報収集を開始。市民参加による四季の生物観察を支援するための講習や観測マニュアルの提供なども予定されており、広範囲な観測網が形成されていく。
上記の2つの観点と取り組み内容にて、効果的な観測の枠組みの設計や運営課題を抽出し、検討が進められていくことになります。
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気象庁は「生物季節観測の見直し」の発表に対する多くの反響を受けて、従来通りに継続させていくための方法論を模索し、環境省とも調整を重ねながら、各気象台で観測の方を続けていたようです。
1月29日には、改めて「生物季節観測指針」が公開されています。
二十四節気は「清明」、初候「玄鳥至る(つばめきたる)」第十三候も迎え、つばめたちが飛んでいる姿も目にしました。
観測は継続していくことによって価値を形成します。70年近くに及び積み重ねられてきた貴重な観測データが価値を失うことなく、今後も新しい枠組みによって存続・発展していくことになりそうで、ひと安心です。
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