事務所の物置で資料を探していたら、懐かしい試作品が出てきた。15年位前に、某コンビニチェーンに対する新しいプロモーション・ツールとして提案をしたものだ。
LED電球と太陽電池パネルを使い、新商品の訴求やスポットのプロモーション告知を展開していくツールだ。コンビニの店頭に必ず置いてあるイン看板という既定のツールの上から被せて使う。
※蓄電された太陽電池によって、告知ボード下部のラインが ピカッ!ピカッ!ピカッ! と点滅して走る。
※トップにある太陽光パネルによって、晴天時の昼間に、太陽エネルギーをたっぷりと蓄えておく。W 560×H 480×D 95 mm
コンビニの店頭ツールとしては、イン看板の他に、ポスターや横断幕・のぼり・タペストリーといった様々なものがあるが、当時、店頭の出口調査で、その訴求力や告知力が課題になっていた。
買い物が終わって帰るお客様に対して、来店した時に、それらのツールの内容を認識出来ていたかどうかをアンケートしてみると、予想以上に低い認識率を示した。そのあたりの課題に対するテストマーケティング的な取り組みという主旨もあった。
入口に一番近い場所に存在するイン看板を活用して、ちょうどお客様の歩いている時の目線の位置に展開出来る。そこが提案の起点になった。そして、より訴求力を高められるように、LED電球を使ってみる。
このクライアントは、当時からエコをキーワードに色々な取り組みを積極的にしていたので、太陽電池パネルも組み合わせて使ってみようということになった。告知面のボードに関しては、その都度簡単に差し替えられるようになっている。
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この試作品は、ものづくりのパートナーであるN氏と一緒に企画し、そして試作した。その当時勤めていた会社の会議室を工房化して、二週間位、二人でそこにこもって、製作に没頭した記憶が蘇る。
LED電球と太陽電池パネルを組み合わせる電機系統は、N氏の専門領域なので、そちらの進行は任せる。一番難しい点は、日没から日の出までの時間発電出来るだけの蓄電を、天候や季節などの条件に左右されずに確保すること。何度もシミュレーションが繰り返された。
私は、クライアントから借りてきた既定のイン看板に合わせて、筐体の設計をして、電機系統のメカキットを組み込めるように考える。その他にも、告知ボードの差し替え方やイン看板への取り付けの仕方など、運営的な点についても考慮する。
N氏と確認し合いながら、クライアントとも相談しながら、綿密に詰めていった。
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そして、大枠のスペックが決まって、実際に筐体を形にしていく。
作業の流れとしては、こんな感じだ。紙粘土を使って、図面に従い大元となる型を作る。それが出来ると、電機系統のメカを組み込む部分と、告知ボードの取り付け面部分を色んな道具を使いながらくり貫いていく。
その基本となる型が出来上がり、よく乾かした後に、紙ヤスリなどを使って、ディテールを丁寧に仕上げていく。その次の工程が、この試作品のポイントだ。
その完成した基本型の上からFRPのシートを専用の糊を使って、細かく張り合わせていく。FRPの薄いシートを小さいサイズにカットして細かく張り合わせていくので、曲面や微妙な凹凸部分もしっかりと追っかけられる。いずれにしても根気のいる作業ではある。
最終的な筐体となる面全てにバランスよく満遍なく張り合わせたら、しっかりと糊を乾かせる。完全に乾いたら、型となっている紙粘土を削り落としていく。そうすると、最終的にFRP製の筐体が出来上がる。仕上げとして、目の違う紙ヤスリを何種類か使って、綺麗に形を整える。
このあたりの一連の作業は、当然、N氏と力を合わせながら進めて、数日を要している。そのFRPの筐体の上に、吹き付け塗装を何度か重ねて、写真のような青い筐体の出来上がり。
そして、N氏が製作してくれた電機系統のメカキットを、その筐体に組み込んでいく。両側の告知面に告知ボードを取り付けることで、電機系統のメカキットのスペースを塞いで、写真のような試作品が完成。
ツール上面の太陽電池パネルによって、昼間電気を蓄電して、夜間、その蓄電気によって、告知ボード下部のLED電球のラインが点滅する。そんな仕掛けだ。
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残念ながら、ツールとしては量産化には至らなかったが、とても充実した時間を経験出来て、技術的な部分だけでなく、ものづくりにおける大切なことを色々と学んだ気がする。
現在では、当たり前のようになりつつあるLED電球と太陽電池パネルを使っての商品化だが、その当時としては、先を行っていたアイデアだったように思う。LED電球もまだまだ発展途上で、色数も限られていた。しかし、N氏は、その当時からLED電球の可能性を捉えて、知識や技術を蓄えていた。紙粘土とFRPのシートを使って、筐体を作るというのもN氏の発案だ。
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ピカッ!ピカッ!
15年近く物置に眠っていたにも関わらず、一日、陽の当たる場所に置いといたら、その夜、元気よく光り出した。思わず嬉しくなり見とれていたが、改めて、その耐久性とN氏の技術力に驚かされた。現在、N氏はその知識と技術を活かし、その方面で事業化をしている。