20代前半に描いた一枚の絵。その頃、客船が好きでよくモチーフにして描いていました。この作品のタイトルは『 Voyage 』で、朝もやの港を出航する船をイメージ。
未来への期待感を、コントラストを使って表現しました。ペンとエアブラシとカッターナイフを使っています。ハイライトの部分に、カッターナイフで切り込みを入れています。
個人事業というスタンスで独立をしてから10年目を迎えて、次なる未来(これからの10年)に向けて新たなスタートをきる。そんな今の気持ちにも ちょうどフィットするので、棚から出して見えるところに置いておこうと思います。
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元々、建築の意匠からデザインを始めたので、図面とか模型とかを組み立てながらモノゴトを考えていく習慣が身についています。
仕事を進める上で、最近は、当然のことながらコンピューターのチカラは絶大です。これからも益々そうなります。しかし、反面弊害も色々と出てきます。よく、漢字を読めるけれど、書けなくなってくるという話を聞きます。本来、字というものは、筆を使って書くための表現手段として、昔から成り立ってきた文化だと思います。その書き順という過程を意識しながら字を書き上げる。ある意味、そんな醍醐味があります。
しかし、コンピューターで入力という形になって、ひとつのセットの図柄として打ち込まれるという感覚になっています。そこに醍醐味というものは感じられません。だから、図柄として認識をしているので、それを読むことは出来るけれども、筆を使って書くことは出来ない。やもすると、本当に字を書くという文化が失われてしまう。そんな危機感もあります。
そのこととも通じる部分がありますが、私なりに仕事の進め方で気をつけていることがあります。まだ、私がデザインという仕事に携わり始めたのは、ドラフターとか写植版下とかいう言葉があった頃の話です。あまりコンピューターなんかに依存していない時代です。その時のスタンダードな仕事のやり方を変えないということです。
特に、何かを考えようとする段階では、出来るだけコンピューターは使わないようにしています。インターネットで、情報収集したり、リサーチしたり…というのは別ですが、それ以外は、手とペンを動かすようにしています。アイデアを紙にカリカリと書き出したり、図面を描いたり、模型を作ったり…するのは億劫ではないので、そのスタイルだけは崩さないようにしています。
具体的に立体化・視覚化出来るものは、すぐにプロトタイプや手書きのラフを作って考えます。プロトタイプや手書きのラフを作ることによって、イメージはより広がるし、改善ポイントも見えてきます。
それを作りながら、アレコレと考えるのも楽しいし(そんな楽しんだ過程もクライアントには、必ず伝わります)、それをクライアントへのプレゼンテーションで提示した時の相手の興味の持ち方も全然違います。
きれいにコンピューターでまとめた画や企画書より、そういった作りかけのプロトタイプや手書きのラフなんかの方が、こちらのプランに対する熱意だとか、イメージが伝わり易い部分があるように思います。(もちろん、全てがそうではありませんが。)
例えば、コンピューターで図面なり、企画書をまとめようとすると、まとめ上げることが目的のようになってしまい、そのプランを組み立てていく中での、行ったり来たりが出来にくくなる感があります。その点、プロトタイプや手書きのラフは、いくらでも行ったり来たりできます。
新商品やサービス・プロモーション等の全てのプランニングにおいて、プロトタイプや手書きのラフを作って考えていきます。それは、時間の無駄ではなく、時間の有効活用です。急がば回れです。
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一方で、事業計画やマーケティング的には、コンピューターというツールは欠かすことができません。
フリーランスとして独立をしてから現在までは、どちらかというと農耕民族型で仕事をしてきたように思います。しかし、今年で10年目を迎え、これからの10年は狩猟民族型の仕事をしていかないと厳しいものになるだろうと感じています。
マーケティングで情報をしっかりと分析して、社会・経済の風向きを読み、ターゲットの動きを的確に捉えて、研ぎ澄まされた感覚で瞬間的に商機を掴む。
この観察力・判断力・スピード感がないと、この時代の流れには ついていけない。その大きな武器となるのは、やはりITです。
アナログとデジタルのバランスを上手く取りつつ、これからも自分らしい仕事をしていきたいと思います。