新商品開発プロジェクトのワークショップのグループディスカッションを進行させていただいた際、円滑に進めていくための技術としての「ファシリテーション」を強く意識しました。
ワークショップでは、事前に実施をしたアンケートの結果を元にワークシートを準備して、テーマに基づいたグループディスカッションを行いながら、新商品開発のアイデアを導き出していくことがタスクとなります。
グループディスカッションでは、メンバー全員が自発的に発言や体験・作業などを行える環境を整えなければなりません。その環境が整うことで、メンバー同士の体験共有・意見表出(ブレインストーミング)・創造表現・意見集約・その他のコミュニケーションを深めること‥などの効果・効用を期待できます。
その効果・効用を最大限に引き出すためのファシリテーションの技術としては、「グループディスカッション自体には参加せず、テーマに沿って発言内容を整理し、発言者が偏らず、円滑に進行するように適切なサポート・調整・時間配分などを行っていく。」ことが基本となります。ファシリテーション(facilitation)には「何かをやりやすくすること」「物事を円滑に進めること」という意味があります。
決して、自分の意見や主張を述べたり、自ら意思決定をしたりしないで、利害から離れた客観的な立ち位置を維持することによって、グループのメンバーに主体性を持たせることができます。
グループディスカッションのファシリテーションにおいて強く意識した4つのポイント
- 進行の段取りとシミュレーション
- アジェンダの事前配布
- 発言しやすい雰囲気づくり
- メンバーの立場を尊重
- 進行の段取り(シナリオ)を決めておき、議論をどのようにまとめていくのかを事前にシミュレーションしました。予想外の事態や質問に対しても的確に対応できるように準備をしておきます。限られた時間内にタスクをクリアできるよう、グループのキーパーソンに事前の相談をして認識を擦り合わせておきました。
- 事前に実施したアンケートを、グループディスカッション全体のフレームワークの材料としました。メンバー全員にアジェンダを事前配布し、議論するテーマを周知しておきました。
- 本番においては、メンバー全員の意見を遮ることなく最後までしっかりと聞くことを心掛けて、最適な結論が得られるように論点を明確にしていきます。メンバーの様々な意見や主張を都度整理・記録・共有し、 特定の意見や見解に偏ったり、否定・肯定したりすることなく、全員が発言しやすい議論の場を作れるように努めました。個人的な希望や願望に捉われることがないように留意をしました。
- 最終的には、より良い結論をメンバー相互にて得られるように、様々な発言内容の共通点と相違点を見つけながら妥協点を探ることで、タスクをクリアしました。
ファシリテーションによって、グループディスカッションの効果・効用を最大限に引き出していくためには、「事前準備」と「聞くチカラ」がキーワードになってきます。「聞くチカラ」は、普段から意識をして養っておくことも大切です。
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グループディスカッションの効果・効用の一つであり、新商品開発において肝ともなる意見表出(ブレインストーミング)を活性化させるために、メンバーとは、ブレインストーミングにおける4つの基本ルールを共有しました。
ブレインストーミング(brainstorming)は「アイデアラッシュ(アイデアを生産し問題の解決に結び付ける)」をするための創造性開発技法です。1938年にA・F・オズボーン氏により考案されました。
自由奔放な発想からお互いのブレーン(頭脳)を刺激し合うことで、更に創造的なアイデアを生み出すことができるという考え方が基本となっています。多数のアイデアを出し合う中で問題点を明確にし、その内容を分析・整理しながらリスク要因を洗い出すことで問題解決策へと導きます。
「アイデアラッシュ」という言葉の通り、ブレインストーミングは活性化をしなければ意味がありません。
「人のアイデアを批判せず、皆が自由奔放に沢山のアイデアを発言し合い、それらのアイデアにも皆でどんどん便乗をして、更にアイデアを広げていく。」ことで、ブレインストーミングは活性化します。
ブレインストーミングを活性化させるためにメンバーと共有した4つの基本ルール
- 批判厳禁:お互いのアイデアを尊重する
- 自由奔放:思い込みを捨てて発想をする
- 質より量:とにかく皆が発言をしよう
- 便乗する:人のアイデアにも乗っかろう
- 「そんなことをしたって意味がない」「難しすぎる」「予算が合わない」メンバーは、このような批判的な意見を発言してはいけません。誰かが批判的意見を思わず口にするだけで、全員のモチベーションが下がります。自分のアイデアを「無理だ」と否定されないかと余計な考えをするようになり、アイデアを出すことに対して臆病になってしまいます。その瞬間から、場は沈黙へと変わってしまいます。お互いのアイデアを尊重し、批判をすることなくアイデアを出し合っていきましょう。
- 常識の枠に囚われていると、どうしても新しいアイデアは出てきません。自由奔放で突飛なアイデアは、たとえ採用されないとしても、メンバーの常識の枠を取り払う効果があります。「そんな考え方があったのか」「そういう切り口もあったな」というように、他のメンバーの視野が広がり、そこから端を発して創造的なアイデアが出てくる可能性があるのです。笑いを誘うようなアイデアも、場の雰囲気を良くする効果があります。堅苦しい雰囲気の中からは、ユニークなアイデアは生まれません。自由な「ゆるーい感じ」の雰囲気で楽しみましょう。
- どんなにくだらないと思われそうなアイデアでも発言をすることに意義があります。それは沈黙の時間を減らし、議論のテンポを良くします。一度沈黙が起こってから、口火を切るのは勇気がいるものです。常に誰かからの発言があるのが望ましい状態です。アイデアを出し続けられれば、メンバー同士のアイデアを誘発します。考え込まず、恥ずかしがらず、どんどん思いついたアイデアを発言していきましょう。
- 自由奔放に数多くのアイデアが発言されたならば、積極的に他人のアイデアにも便乗します。自分のアイデアを述べた後に、他の人が出したアイデアについても、どうすれば良いものになるかを提案すると良いでしょう。そうすることで、場の雰囲気も盛り上がります。メンバー同士の知識や知恵の融合で、画期的なアイデアが出現する可能性があります。
この4つの基本ルールに則ることで、ブレインストーミングを活性化させることができ、その醍醐味をメンバー全員で感じることができます。新商品開発のプロジェクトを進めていく上で、グループディスカッションのファシリテーションにおいては、このブレインストーミングの段階が最も重要であるとともに、最も楽しく盛り上がる時間と言えるかもしれません。