丸善カフェでのある出来事 – コーヒーとスーツと男の品格

丸善カフェでコーヒーを飲んでいる時のある出来事です。お気に入りの窓辺のカウンター席でコーヒーを飲んでいましたが、一つの空席を挟んで、左側に50代後半位かなと思われるスーツ姿の男性が座っていました。


お洒落なスーツを格好良く着こなしていて、見るからに、近くの大企業の重役さんなのかなという感じ(勝手な想像ですが…)。

ランチを食べていたようですが、しばらくすると食後のコーヒーが運ばれてきました。

 

丸善カフェのイメージ

 

「あっ!」

という若い男性の声がしたので、そっちの方を向いてみると、若い店員さんが慌てふためいています。

コーヒーのミルクのポットをひっくり返してしまい、それがその男性のスーツにかかってしまったようです。それもちょっとではなく、かなりの量がスーツの上下を汚してしまっています。傍目からみても、かなり大変な状況です。

若い店員さんは平謝りで、すぐにタオルを取りに行きながら、店長さんらしき人を呼んできました。店長さんらしき人も一緒に平謝りですが、その男性は至って平静です。

タオルを受け取り、汚れた箇所を拭きながら、クレームを言うでもなく、落ち着いて状況をこなしています。

店の方たちが平謝りを続けていると、その男性は、

「大丈夫ですよ。」

と言いながら、

「濡れたタオルを貸して下さい。」

と穏やかにお願いをする。

どうやら乾いたタオルだけでは、染み込んだミルクがなかなか取れないようだ。水とかではなく、ミルクというのがやっかいだ。

用意された濡れタオルで、一時入念に処理をしていると、

「もう大丈夫ですよ。」

と笑顔を見せる。

店長さんらしき人が再び丁寧に謝り、クリーニング代のお支払いと、今日のお代の方はサービスいたしますという旨のことを告げると、その男性はこう言った。

「そういうことは、必要ないですよ。」

「そういうことをされると、次(お店の方に)来にくくなりますから…。」

「また、来たいですから(笑顔)。」

と言って、何事もなかったようにコーヒーを美味しそうに飲み始めました。

この男性のその言葉の深さと、一連の身のこなし方というか、状況の対応の仕方というものに驚かされました。

その穏やかさと強さを兼ね備えた対応力。懐が深いというのだろうか。肝が据わっているというのだろうか。イレギュラーに全く動じない、その男性の度量に感動を覚えました。

人間というのは、予想外のことが起きた時にどう対応するかで、その人の品格が決まると思います。この男性の品格は、超一級品だと思います。

もし、自分がこれと同じようなことになっていたとしたら、どう対応していただろうか?ちょっと考えさせられました。

お店の人も、最後の言葉を聞いた時、さぞかし感激したことだろう。逆に言えば、そう言ってもらえるホスピタリティの実績が、この店にあったという証でもあると思います。

リスクではあったが、こういったお客様とのやりとりの積み重ねで、お店というものも更に進化していくのだろう…、とも感じました。

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