流通業再編における総合スーパー(GMS)の新しい価値創出

先日、西武百貨店のことに関する記事を書きましたが、百貨店業態の衰退に続いて、流通の花形であった総合スーパーも業績不振が長らく続き、岐路に立たされています。


総合スーパーは、業態的にはGMS(ゼネラルマーチャンダイズストア)と呼ばれて、高度経済成長期には、百貨店と共に、流通において確固たるパワーを持っていました。しかし、CVSという新業態の出現に始まり、カテゴリーキラー・専門店の台頭が勢いを増し、その後、インターネット通販の攻勢により、そのパワーは減退していきます。

GMSの進化型とも捉えられる大型ショッピングセンターやスーパーセンターといった業態も出てくる中で、既定のGMSという業態の強みも薄れていきます。その最盛期における成功体験があまりに大きかったために、社会やお客さまのニーズの変化に、自らが対応できなかったとも言われています。その位のパワーを持っていたということになります。

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GMSが、今後も その業態を維持していくためには、新しい価値の創出が、必要不可欠になってきます。大手の総合スーパー各社の現状と、今後の事業戦略を見てみます。

セブン&アイ・ホールディングスは、構造改革を徹底し、不採算の40店を2020年までに閉鎖していくことを打ち出しています。当社の総合スーパー事業は、15年8月の中間決算で、90億円の営業損失に陥っています。国内185店舗(2015年9月末現在)の内、このまま採算が改善しなければ、約2割に当たる約40店舗を2020年までに順次閉鎖していくということです。対象となる店舗に関しては、「精査中」(広報担当者)としていますが、特に経営環境が厳しい地方店舗に集中しそうです。ユニーグループ・ホールディングスも、拡大路線を見直し、不採算店を50店程度閉鎖する可能性を示唆しています。

一方で、イオンは、再生にこだわっています。閉鎖はせず、新業態への改装などで再生をしていくことを打ち出しています。業績が悪い店舗は、改善したくても投資を認めてもらえず、「売り場の魅力が低下して客が離れ、採算悪化でさらに魅力を失う悪循環に陥っていた。」と言います。全国の店長を集めた会議で、売り場づくりに掛ける費用を切り詰め、商品の安さで集客する手法との決別を宣言したとのことです。

しかし、前記の新業態への改装という言葉には、少し違和感を感じます。単なるハード的な改装にとどまるのであれば、新業態とは呼べず、抜本的な課題解決には成りにくいのではないでしょうか?疑問符が残ります。

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総合スーパー(GMS)という業態の新しい価値の創出の可能性を探っていくために、セブン&アイ・ホールディングスの事業戦略を、もう一歩踏み込んで考察してみることにします。

 

イトーヨーカドー-パンフレット※イトーヨーカドー|社会・環境への取り組み 2015-2016

 

イトーヨーカドーの店頭に置いてあるパンフレットを見てみます。タイトルは、「地域の生活拠点として – 私たちが目指していること」となっています。そして、次世代のために、今、イトーヨーカドーができることと続いていきます。

環境、少子高齢化や地方の過疎化‥といった問題を取り上げて、地域に暮らす一人ひとりが問題を意識し、行動していくことが、サステイナブル(持続可能)な社会の実現につながっていくとしています。豊かな社会を次世代につなげていくために、地域の方々と、世の中が抱える問題に向き合い、課題の解決に取り組んでいくと述べられています。

いくつかのキーワードが挙がっている中で、気になるキーワードがありました。買物弱者という言葉です。その定義を見てみると、「自宅から最寄りの生鮮食品店の距離が遠い」「移動手段がない」などの理由から日々のお買い物に不便を感じている方たちとなっています。生鮮食品販売店舗までの距離が500m以上の世帯数の推計値は、1,700万世帯(32.1%)と記されています。

また、ここでは触れられていませんが、この距離の問題に加えて、時間軸の問題もポイントになってくるものと思われます。「忙しくて、店舗まで行く時間がない。」「食品売り場のレジがとても待たされる(時間が掛かる)」などといったストレスもあることでしょう。個人的にも、イトーヨーカドーのレジは、流れが悪いというか、滞留してしまうという印象があります。買い物に時間を掛けることは、お客さまの意思によるところが大きいので良しとすると思われますが、レジの流れや、在庫や何かの確認待ちなどは、受け身的な要素になるので、ここで時間が掛かると、かなりのストレスを感じることになります。特に、レジの流れは、買い物の最終段階なので、スムーズに済ませたいという気持ちが強いと思います。

イトーヨーカドーが、この買物弱者というターゲットを設定している点から考察できるのは、GMSという業態が行き詰まっている原因が、「お店に行きたいんだけど、何らかの理由から行くことができない。」「何らかの理由から、他のお店に行ってしまう。」という機会損失にあると捉えているということです。

イトーヨーカドーでは、そんな方々のお買い物にまつわる障壁を解消するため、様々な取り組みを実施していますが、「イトーヨーカドーネットスーパー」もその一つの施策となります。

「イトーヨーカドーネットスーパー」は、インターネットでご注文いただいた商品を近所の店舗からお届けするサービスです。インターネットで注文後、近所の店舗から最短4時間でお届けができるみたいです。これまでの食料品・日用品に加え、105店舗で医薬品の取り扱いを開始。さらにnanacoポイントも貯まるようになりました。店舗まで距離のあるお客様やお買い物時間が取れないお客様も、便利にご利用いただけます(2015年2月末現在)

そして、2015年11月1日からスタートしたオムニ7へと繋がっていくのかもしれません。オムニ7とは、セブン&アイ・ホールディングスの関連企業によって構成され、コンビニや百貨店、スーパー、専門店の商品やサービスなどが、いつでもどこでも欲しい時に利用できるショッピングスタイル(インターネットショッピングサイト)になります。

セブン&アイ・ホールディングス主導のモールみたいなものといった形になるのでしょうか?

その概要をイメージした時、もしかしたら、オムニ7は、GMS業態の進化型(新しい価値の創出)なのかもしれないと感じました。お客さまのニーズの多様化に対応していくためには、単一的な展開ではなく、コンプレックス(複合的)な展開をしていく必要があると考えられます。セブン&アイ・ホールディングスの関連企業のラインナップからすると、それらが水平的に連携することで、その実現が可能になってきます。

先日の記事「時代の変遷と、西武百貨店の新業態。その新たな可能性は?」でご紹介した西武百貨店の新業態 “ 西武三島ショップ ” も、この複合的展開におけるリアルな店舗での一つの試みと言えるのかもしれません。そうなると、西武百貨店の新業態という位置付けで捉えるよりも、セブン&アイ・ホールディングスのオムニ展開におけるパワーコンテンツと捉えた方が良いのかもしれません。

次回、このセブン&アイ・ホールディングスのオムニ7という新しい展開について、もう少し詳しく見ていきたいと思います。

 

(静岡新聞 2015.11.20|ニュースインサイド/参照・引用)
(イトーヨーカドー|社会・環境への取り組み 2015-2016
 /参照・引用)

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